2026/7/6 公開
この記事は「英語がスラスラ出てくる英文法の勉強のしかた」(2015年公開)の一部を独立させ、再編集したものです。
英文法感覚を身につける勉強の手順 ― 英語がスラスラ出てくる状態へ
英文法は勉強しても、知識のまま止まっていては「英語がスラスラ出てくる」ようにはなりません。知識を実際に使える「感覚」に変えていく作業が必要です。そもそも文法の勉強が必要かどうかの議論については「英文法は必要か ― 大人が英文法を勉強する意味」で書きましたので、まだの方はそちらもご覧ください。この記事では、知識を感覚に変えるための具体的な手順を解説します。
英文法感覚が身に付くとはどういうことか
余談:英語で考えていますか?
ある程度英語ができるようになると、よく聞かれる質問があります。それは「藤村さんは、英語で考えることが出来るんですよね」というものです。これはとても不自然な質問に私には聞こえます。
「あなたは日本語で考えているのですか?」と聞き返すと「あっそうか」と気付く人もいれば「うーん、もちろん日本語しか知らないから、日本語で考えてると思うけど」と言ったりする人もいます。この感覚は多言語を話せるようにならないと意外と分かりにくいものであるようです。
ゆっくりと熟考するようなとき、噛みしめるように自分に言い聞かせたりするときは、特定の言語が想起されることもあります。しかし会話するときは、言語で考えたりはしません。頭の中にあるイメージが、言葉に直接変換されて出てきます。
ここで言いたいことは「人間は言語で考えているのではない」ということです。もっと高速に処理できるもので考えています。それをこの記事ではイメージとか気持ちとか呼んでいます。このことは記事の後半を読むための重要なポイントなので、覚えておいてください。
英文法感覚を身につける手順
順番は以下のようになります。
- 英文法の基礎知識だけを厳選してインストールする
- 知識を感覚化する
書くと簡単そうですね。しかし意外とコツがいるところでもあります。以下に詳しく解説します。
基礎のみを厳選してインストールする
英文法は、本気ですべてを解説しようとすると膨大になります。なぜなら現実に起きている現象を分類・分析しようと思えばいくらでもできるからです(そしてあなたに必要なのは分類学ではありません!)。ですから深入りしすぎないことが極めて重要です。
つまり、文法書はそれなりに注意して選ぶ必要があります。
気管支炎はtheを付けない、はしかにはtheを付ける……
やべ酸素なくなってきた
さあ勉強するぞ! と気負うと「できるだけ詳しい文法書のほうがいい」と考えてしまいがちです。しかしこれは日本語を覚えるのに辞書を買うようなもので、よくある挫折の原因のひとつです。
おすすめの文法書、おすすめする理由については以下のリンクにまとめています。
英語学習におすすめ本
初期段階の役割は、脳内にある英語知識の地図に杭を打っていくことです。最初からすべてを完璧に準備する必要はありませんし、できません。大まかに何があるのか全体像を把握することです。
深掘りのコツ
英文法をおおまかに復習したら、これからはそれを血肉にしていく課程です。
私が提案する具体的なコツは以下の5点です。
- 実際に活きた英語に出会う中で英文法感覚を修正する
- アウトプットする(書く)
- 違いを理解しようとする
- 脳内英会話する
- 量をこなす
1.実際に活きた英語に出会う中で英文法感覚を微調整する
まず理想から書きます。
英文法感覚が最も効率的に強化されるのは「実際に活きた英語に触れる中で、勉強した表現に出会ったとき」です。
実際に英語を使ったことのある方は実感としてよく分かることだと思います。
表現したいという気持ちがある、あるいは聞いたときに驚きがある。自分が主体的にコミュニケーションに関わっているときは、脳内の「気持ち」が活発に働いています。
この「気持ち」が「感覚」に強くつながっているのです。
結局のところ、英文法感覚とは、頭の中で考えているイメージ、気持ちを表現しようとしたときに、それが言葉としての英語になるかどうかということなのです。もちろん逆も言えます。
ですからイメージのないところに英語だけ入れても、感覚化にはつながりません。イメージと英語のつながりを強化しなければなりません。英語の「聞き流し」に効果がないのはこのためです。「和訳」は理解しているかどうかの確認手段としては良いですが、これも感覚化には直接つながりません。日本語と英語をつなげるのではありません。みなさんの頭の中でイメージと日本語が既につながっているように、イメージと英語をつなげます。
「はじめに気持ちがあって、言葉と動きがある(© 月影千草)」のです!
なので、英文法の知識を入れた後は、当たり前のようですが、実際の英語に触れてみるのが一番なのです。
目的さえ満たせれば手段は何でも構いません。実際に会話したり読み書きしたりするのが一番ですが、それがなくても、たとえば感情移入できるドラマを観るとかでもいいと思います。
「I go to school! 」
「ちょっ……やっぱこの方法違う気がする」
共感能力や感情移入の力が強い人は、英語感覚を身に付けるのは早いはずです。たとえば、どんな英文を読むときもその背景にある気持ちをありありと具体的にイメージしながら読むことで、英語感覚というのは磨かれていきます。この方法は人を選びますが、多少なりともエッセンスを入れるようにすると、英語学習全般に役に立つはずです。
ただし、こういった実践のみではどうしても偏ります。短期間で意識してマスターするには網羅性が足りないからです(登場頻度は低いけれども重要な文法というのは存在します)。また、実践に入るにはそれなりの実力がいります。自分のレベルにあったコミュニケーションをしてくれる相手を探すのは難しいことです。
そこで実際には、別の方法も併用します。以下を読んでください。
2.アウトプットする(書く)
インプットだけではなかなか覚えられません。正確には覚えられますが「印象的な出来事」が必要なので効率が悪いです。ほとんどの文章はあなたにとって人ごとです。脳内の感情と結びついていません。だから身に付かないのです。
一方で自分で英語を発信するときは常に自分ごとです。従ってアウトプットの方が遥かに脳にとって効率的です。写経みたいな方法ではなく、自分オリジナルの文章を、自分の気持ちを表現する文章を書くことが大事です。英会話でも良いですが、意識的に文法感覚を身に付けようとするときには断然ライティングをお勧めします。
なぜか。それは出力内容とスピードを自分でコントロールできるからです。
たとえば、仮定法過去の文法感覚を身に付けようといっても、会話ではそうそう出てくるシチュエーションではありません(だからといって仮定法過去が大事でないということは決してありません。このことはいずれ書きます)。ライティングであれば、自分の思いつくままにシチュエーションを考えて作文できます。英会話では相手の言葉を理解したりする余計なプロセスが入るので難易度が高く、効率が悪くなりがちです。ゆっくり確実に、正しい表現を身に付けましょう。
書くといっても、必ずしも手を動かして物理的に書く必要はないと思います。タイピングで構いません。自分に合う方法を使ってください。私は両方やりましたが、その2つに差を感じたことはありません。
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最後に、自分の作文を声に出して心をこめて読んでください。これで、感覚化に音とスピードが加わります。
心をこめて読むとはどういうことか
「俺は天才、俺は天才、俺は天才……」
英文法とは心理学です。無味乾燥に見える英文法にも、その背景には人の心があります。
先程紹介した例文でやってみましょう。
If today were the last day of my life, (今日が私の人生最後の日だったとしたら)
If today were と言ったら、その瞬間に、ありえない仮定の世界の気持ち――「たとえばの話ね。ほんとは違うんだけど、仮にね」という気持ちを思い浮かべます。
would I want to do what I am about to do today? (果たして自分は、今日これからまさにやろうとしていることをやりたいと思うだろうか?)
would I want to do と言ったら、would I の瞬間に「自分自身のことに確信がない」気持ちが働きます。つまり自分が want to do かどうか確信がない。そして want to do と来たら、当然その次には目的語としての名詞を期待します。
次に what I am about to do today? と聞いたら、whatの瞬間に、ああ、名詞じゃなくて名詞節が来るのだな、という心構えができ、その後に主語+動詞が来ることが自動的に分かります。
上記の分析プロセスはすべてミリ秒の単位で行われます。難しそうですね。でも、皆さんは日本語でこの難しいことをいともたやすくこなしています。時間は掛かりますが、必ず身に付けることができます。
このように、どんな気持ちを働かせばいいのか、意識しながら読んでいきます。感情を込めながら、何度もつぶやきます。最初はもちろんゆっくりになりますが、段々スピードを上げられるようになります。
文章をどこで区切ればいいか分からないよ、という人へ
あまり細かいことを気にしないでください。ネイティブスピーカーでも(おそらく似たレベルには収束するでしょうが)位置は異なるはずです。感覚とはあなただけのものです。他を参考にする必要はありません。教えられるようなものではありません。
あまりにも途方に暮れてしまう人は、そもそも英文法の勉強が足りない可能性が高いです。このような心理状態を体得するヒントはすべて文法書に書いてあります。
たとえば、SVCの構文ではS=Cと習ったはずです。I am a student. と聞いたときに、I = a student. という意味のイメージを浮かべる。そういう感じです。
この項目で書いたことは抽象的なので、具体的にどうすればいいか分かりにくいかもしれません。心を込めるコツの1つを次に書きます。
3.違いを理解しようとする
文法にはすべて意味があります。たとえば過去系と完了形が違うことには、意味があります。それは、その言葉を発するときに想起される心理的なイメージが異なるのです。
たとえば、will と be going to に違いがある、という話は有名なので聞いたことがあるかもしれませんね。
しかし、どうせ通じるのだからどちらでもいいじゃないか、と思っていませんか?
初学者なら、それでも良いでしょう。しかしこの思い込みこそが、英文法感覚を手に入れる障害なのです。
英文法感覚を本当に身に付けたいのなら「通じればいいや」を捨てましょう。「通じればいいや」は文脈の世界、想像力の世界です。実際のコミュニケーションでこれらが重要なことは言うまでもありません。しかし初心者の段階を越え、本当に英語感覚を身に付けたいと思う人はその考えを一旦捨ててください。
えっと、結局キスしたいってことでいいんだよね?
たとえば、以下の英文は誤りです。
I have not joined the event two years ago.
しかし、なぜ誤りなのか? これを誤りとする根拠は何か? ネイティブはこれを見たときどうして「気持ち悪い」と感じるのか? そういった感覚を身に付けようとしてください。これは決して「細かい英文法」なんかではありません。これがおかしいと思わない場合は、おそらく完了形の「心」が理解できていないと思います。
注意点は、分かったつもりにならないこと。英文法感覚とは「大量の正しい英文に触れた結果として身に付く」ものです。感覚そのものを言葉でインストールしようとしないでください。「~ingは活き活きしている感覚」などと、言葉で入れるだけでは「わかったつもりになる」だけで、むしろ正しい感覚を養うのに邪魔になります。
もやもやしたイメージだけで、できるだけ言語化しないまま留めておくのがおすすめです。その仮説段階のもやもやした英文法感覚を、実際に英語に触れる中で微調整していくのです。
文法書ではなかなか身につかない、日本人にとって特に誤解しやすく理解しにくい英文法のポイントをぎゅっとまとめた全5回のオンライン講座を提供しています。”英語が好きになる” 英文法講座のページへ
注意
コミュニケーションのためには「間違いを恐れずに話すのが大事」と言われますね。私はこれに全面的に賛成します。「違いを意識する」ような深い勉強をしていると、このような心構えを忘れてしまうことがあります。間違えるのは、むしろチャンスなのです。なぜなら、それがきっかけになって、次は間違えないようにできますからね。どんどん間違って、自分の現在位置を確認しましょう。英語学習は長い道のりですから、楽しむことも大事です。間違っていてもいいので「通じた」「話せた」喜びを大切にしましょう。このような積極的な心構えで実践に臨んでいると「実際に英語に出会う中で英文法感覚を修正する」機会も増えていきます。
4.脳内英会話する
ある程度慣れてきたら、書かずにいきなり脳内英会話をした方が効率がいいことがあります。
好きなシチュエーションで構いません。いきなり有名人になってインタビューを受けるとかでもいいし、憧れのあの人とデートするでもいいし、日頃からうっぷんがたまっていることをぶちまけるでもいいし。
なぜ脳内英会話がいいかというと、もうお分かりですね。「気持ち」と「言葉」がつながりやすいからです。
私も架空のアメリカ人の友人トムとよく話をしました。まじめな話です!(笑)
5.量をこなす
感覚が定着するまでのプロセスには長い時間がかかります。
何度も同じことを言いますが、文法とは、覚えるものではありません。忘れてもいいように、体にたたき込むものです。言葉遊びのようですが、この違いは本当に大切です。
従って何度も繰り返して練習する必要があります。知識をおさらいするために学んだ文法書をもう一度開いて、今度は感覚化の練習(書く、それを話す)をしてください。「文法書を1回やった」だけで英語が使えるようにならないのは、このためです。知識として入っているだけだからです。
といっても「文法書を何周もする」と単に言われただけでは、何をしていいものやら良くわからないと思います。
知識として覚えるために、まずは1回通す。概ね知識としては定着したら、次は英文法事項のチェックリストとして使います。「進行形の感覚は概ね身に付いたな」と思ったら、そのページはもうやらない。「現在形」がまだ分からないな、と思ったら解説を読みつつ例文を作り音読する。そんな感じです。そのプロセスの中で、解説を読み直すと新たな発見があったりもするでしょう。知識には濃度があり、知っている/知らないの二択ではありません。深く学んでください。
繰り返しになりますが、文法書は注意して選んでください。分厚い文法書のすべてをこの調子で勉強するのは不可能です。基礎事項のみを網羅してあるものを使ってください。もし自分の持っている文法書のうち、どこまでやるべきか分からなければ……突き放すようですが「自分で判断」してください。その文法項目があなたに必要なレベルかどうかは、あなたにしか判断できません。
余談:学校教育と英文法
ちなみに中高で6年間英語を勉強したのに話せない……とよく言われますね。私は学校教育にはある程度は肯定的(限られたリソースの中でよくやっていると思います)が、不満なのは、定着を甘く見ていることです。英語は実技科目ですから、体育と同じように教えなければいけません。たとえばサッカーでシュートの仕方を教えたら、あとはひたすら実戦でトレーニングする必要がありますよね。それと全く同じです。高度な内容を教えるのを一切やめて、基礎を定着するまで繰り返すようにすれば、はるかに使える英語が身に付くようになると思いますし、英語が好きになって、自分で勉強を続ける人も増えると思います。
英語において難しい問題を答えられるかどうかは重要ではありません。簡単な問題を瞬時に大量にこなせるかどうかが大事なのです(そのためにはまず大学受験が変わらなければなりません)。そういう意味でTOEICのテストは運用能力を測るという意味でとてもよくできていると思います。
基礎を厳選してインストールし、実際の英語に触れながら感覚化していく――この繰り返しが、英文法をスラスラ使える感覚に変えていく一番の近道です。全体の流れをもう一度まとめて読みたい方は「英語がスラスラ出てくる英文法の勉強のしかた」もあわせてご覧ください。