英語がスラスラ出てくる英文法の勉強のしかた

【 このページを読むと分かること】

  • 英文法とは何のことなのか理解できるようになる
  • 英文法を勉強することの意義が分かる
  • 英語感覚が身に付く英文法の勉強のしかたが分かる

このページで解説しているのは「不自由なく読める、聞ける、話せる、書ける という本物の英語力」を身に付ける方法です。TOEICや学校のテストで手っ取り早く高い点数を取る方法や、とりあえず通じるレベルの英語力を身に付ける方法、旅行で困らない方法などは書いていません(しかし、それでも多少参考になることは書いてあるはずです)。

このページの内容はかなり長いです。お時間のあるときにお読みください。

なぜ英文法?

なぜ英文法を勉強するのか。それは、英文法をきちんと勉強することこそが、最短で英語の運用能力を身に付けるための近道だからです。しかし英文法の勉強ほど誤解されている分野もありません。このページでは正しく英文法を学び、母国語のようにスラスラと英語が出てくる状態を身に付けるための方法を解説しています。

もしかしたらあなたは「英文法はそれなりに時間をかけてきちんと勉強するべき」「いや、英文法の勉強よりも、英語にたくさん触れることが一番大事」といったように、英語学習法に関する矛盾した立場を見聞きするたびに迷ってしまっているかもしれません。いずれの立場にもそれぞれ正当性があると私は思います。考え方の枠が違うだけです。この記事を読んだあと、あなたが迷わなくなることを目指して私はこの記事を書いています。ぜひ、続きをお読みください。

英文法を勉強することの意味

英文法学習のゴールとは

まず最初に、英文法を学ぶとはどういう意味なのか、あらためて整理してみましょう。

英文法を学ぶことのゴールとは何か。それは英語の身体感覚を身に付けることです。 ルールを体にたたき込み、ルールブックの存在がなくても体が勝手に動く状態を作ることです。


仮定法は289ページじゃったっけな

そもそも文法とは何でしょうか。

文法とは長い年月をかけて自然と成立した、言葉を運用する上の習慣の集合体です。

まず誰かがルールを作ったわけではありません。 人々の心の中に自然と存在している心理的な傾向を分析・言語化したものが文法です。

つまり「文法を学ぶ」とは「ルールを通じてその言語文化の考え方・感じ方を身に付ける」ということなのです。

文法が嫌いという人は、この点が理解できていないか、きちんと教えてもらったことがないかのいずれかであることが多いようです。

文法は最終的には気にしなくなるものなのです。なぜかというと、その人の身体感覚に文法が組み込まれたからです。 考えなくても発信する英語が自動的に文法的に正しくなる――これが英文法学習のゴールです。


もっているだけじゃ いみがないぞ
ちゃんと そうび しないとな!

言うなれば英文法とは、チュートリアルであり、初心者向けガイドブックなのです。

英文法の勉強が役に立つ理由

チュートリアルやガイドブックは、以下のような点で特に役に立つと私は思います。

  1. 学習中に自己検証できる
  2. 大人の英語にいきなり入れる
  3. 思い込みや慣れを修正できる
  4. 気付きが増える

1つ1つ見ていきましょう。

1.学習中に自己検証できる

まずは当たり前のところからいきましょう。英文法の知識があると、自己流の英語を自己検証することができます。

「考えなくても発信する英語が自動的に文法的に正しくなる」が学習のゴールです。とはいえ、その境地に至るまでの道はかなり長いものです。このゴールに達するまでの険しい道のりの間、わたしたちの武器となってくれるのが文法です。

たとえば日本語を勉強している外国人を想像してみましょう。あらゆる文章の「てにをは」を全て日本人にチェックしてもらうわけにはいきませんね。

  • 「私が野球が好きだ」は合ってる?
  • 「彼が野球が好きな人だ」は合ってる?
  • 「私は野球が好きな人だ」は合ってる?

と、いちいち確認しなくても、文法のルールに従っていれば、それが正しいものだと自分で確信が持てます。

大人は自習するものです。全部教えてもらうことはできません。

文法は ”自然に身につく” のか

沢山の英語に触れていれば、文法など学ばなくても自然と身につく、という主張がたまに見られます。この主張は一見もっともらしく、私も一時期信じかけていました。

しかし、すぐおかしいことに気付きました。それは「身につくまでの間はどうすればいいのだろう」ということです。

100%英語が使えるようになってから実戦に出るようなことはありえません。英語は勉強するためだけのものでなく、使うためのものです。英語があまりできないうちからも、英語を活用する機会は訪れます。そのために勉強しているのですよね。

本当はスラスラ書きたいし、ペラペラ喋りたい。でも、それが出来なくても、辞書と文法書を使えば、少なくとも相手に理解されやすい英語を書けます。一呼吸置いて頭の中で英文を組み立てれば、話せます。

言ってみれば、英文法の知識とは、自己流の英語をインプット、アウトプットする際に自己検証するためのツール なのです。

2.大人の英語にいきなり入れる

私たちは大人なので、実際に英語を使おうと思ったら、容赦なく大人レベルの英語を(それも準備が十分でないうちから)使う必要があります。絵本ばかり読んでいるわけにはいきません。

以下の例文を見てください。

If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?

使っている単語は中学校で習うようなごく簡単なものばかりです。ただしこれが瞬時に理解できる人はそれなりに上級者だと思います。

文法が身に付いていない人が英文を「読めた気になる」のは、単語と単語の間の意味を脳内で補完しているからにすぎません。ごく簡単な単文であれば、それで通用することもありますし、自然と感覚が身に付くということもあると思います。

脳内補完
君の考えてること当ててあげようか。……僕が好き。

ただし、長文を読むときはとても疲れるので、まず読書は続きませんし、ちょっと文章が複雑になると途端に分からなくなります。リスニングのようにこちらがスピードをコントロールできない場合はなおさらです。

ほとんどの人は「学習中」という事実

このように、ある程度複雑なレベルの文章を瞬時に理解するためには、それなりに英語の実力が必要になります。

そして文章の複雑さレベルというのは、こちらがコントロールできないことです。実際の生活の中で出てくる英語というのは、5語とか6語とかで済むものではありません。日常会話でも、すぐこのレベルまでいきます。簡単な構造の英語しか出てこないのは教材の中だけです。

ちなみに、先程の文章は Steve Jobs の有名なスピーチの一節です。日常会話でも出てくるレベルの簡単な表現です。

体験談:

英語のニュースや本、ドラマなどで勉強するとき、私が苦労したのがここでした。簡単なニュースでも、少年少女向けの本でも、すぐ複雑なレベルの文章が出てきます。読んでいれば自然と理解できるかもしれないと考えて、しばらく本を無理やり読んでみましたが、結局何も変わりませんでした。そこで分かったのは、現実世界はそんなに単純ではない、ということ。そして文章の複雑度が一定以上になると「読んだだけで自然と身につく」というのは幻想だということです。

子供レベルの英語は自然と身に付くこともあるかもしれません。しかし、考えてみれば当たり前ですが、ネイティブスピーカーの子供も英文法は勉強します。大人の英語(つまり、普通の英語)を使うためには勉強が必要でした。

3.思い込みや慣れを修正できる

母国語と違う部分は意識しなければ身につきにくいため、勉強して差を素早く埋める価値があります。

赤ん坊の頭にはまだ何の枠組みもありません。だから、ルールは自然と入っていきます。

それに対して、私たち大人が第二言語を学ぶときは、すでにある日本語のルールの枠組みが邪魔をします。

たとえば、否定疑問文への回答が日本語と英語では逆、なんていうのは有名な例ですね。

Isn't it necessary?
それって必要じゃないよね?

Yes. 必要だよ。
No. 必要じゃないよ。

ですから、違いを意識し、練習しなければなりません。 特に日本語と英語は極めて言語的に遠いもの同士ですから、意識して違いを学ぶことが重要になります。冠詞や時制はその最たるものです。

体験談:

たとえば、日本語では過去形と過去完了形を区別しません。なので、これらの英語感覚は意識して学ばないと身につきませんでした。なぜなら、英語の過去形と過去完了形は「区別が重要なときもあるし、どちらを使ってもあまり差がないときもある」から混乱しやすいためです。それなりに英語に慣れてきたな、という段階になっても、私はこの2つをきちんと理解できていませんでした。このような、自然にはなかなか身につきづらいポイントは英語にはたくさんあります。それは、上でも書いたように、日本語と英語が言語的に遠いからです。

しかし、ひとたび知識としてこれを学ぶと、違いに気付くようになりました。読む英文がすべて違って見えてきました。1つの時制に込めた著者の気持ちが理解できるようになり、自分でも発信できるようになりました。分かっているつもりで、分かっていなかったのです。

4.気付きが増える

英文法の知識があれば、英語をインプットする際の効率が大きく上がります。

先程の文章をもう一度引用します。

If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?

意味は分かりますでしょうか。はっきり分からなくても、なんとなく想像がつきそうですよね。文脈や声のトーンなどを考慮に入れると、より分かりやすくなるかもしれません。この文章が理解できなかった人は、おそらく頭の中で以下のような状態になっていると思います。

もし 今日 最後の日 私の人生 やりたい 何を 私が 今日やる……。

ここから導き出される答えは何になるでしょう。「今日が最後の日なら、何をやりたいと思うだろうか」みたいな感じになるかもしれません(ちなみに、この例文はそういう意味ではありません)。

このプロセスには、英語感覚を理解しようとする心が入っていません。単なる文脈の予測でしかありません。もちろん、その予測が偶然当たることもあります。

それはきっと外れ
わかった。僕とデートしたいって言ったよね?

一方で、英文法をきちんと勉強した人の脳内では「自分の中の(独自の)英文法感覚と、実際の英文とのすりあわせ作業」というのが自動的に行われます。

英文の「心」を理解するための脳内の分析プロセスを繰り返していくと、2回、3回と繰り返すうちにどんどんスピードと正確性が向上していきます。一方で文脈を予測する能力は何度繰り返しても成長することはありません。なぜなら、この能力は日本語の段階で既に成長しきっているからです。

英文法の感覚とはこのように微調整を繰り返した結果身についていくものです。しかし、そもそも自分の中に最低限の判断基準がなければ、ブラッシュアップのしようがありません。

これが、英文法の知識があれば英語感覚を身に付けるのが早くなる、ということです。

英文法を勉強することによって、自分のアンテナが広がり、感覚のズレに気付くことができるようになります。この「ズレに気付くこと」こそが、実際に英語感覚を身に付ける上で決定的に重要です。

勉強をしない人は、いつも想像力と文脈に頼ってしまっています。ヘタにコミュニケーション能力が高いと、この罠に陥りがちですので、気を付けてください。

余談:英語で考えていますか?

ある程度英語ができるようになると、よく聞かれる質問があります。それは「藤村さんは、英語で考えることが出来るんですよね」というものです。これはとても不自然な質問に私には聞こえます。

「あなたは日本語で考えているのですか?」と聞き返すと「あっそうか」と気付く人もいれば「うーん、もちろん日本語しか知らないから、日本語で考えてると思うけど」と言ったりする人もいます。この感覚は多言語を話せるようにならないと意外と分かりにくいものであるようです。

ゆっくりと熟考するようなとき、噛みしめるように自分に言い聞かせたりするときは、特定の言語が想起されることもあります。しかし会話するときは、言語で考えたりはしません。頭の中にあるイメージが、言葉に直接変換されて出てきます。

ここで言いたいことは「人間は言語で考えているのではない」ということです。もっと高速に処理できるもので考えています。それをこの記事ではイメージとか気持ちとか呼んでいます。このことは記事の後半を読むための重要なポイントなので、覚えておいてください。

まとめます。文法をきちんと勉強することこそが、最短で英語の運用能力を身に付けるための近道です。

その理由は以下の通りです。

  • 学習中の段階でも知識を通して正解を知ることができるから
  • 知識として正解を知ることで、自分の英語感覚をそれに向けて微調整していけるから

上記を踏まえ、以下で「どのように英文法を勉強すればよいのか」を解説します。

英文法感覚を身につける手順

順番は以下のようになります。

  1. 英文法の基礎知識だけを厳選してインストールする
  2. 知識を感覚化する

書くと簡単そうですね。しかし意外とコツがいるところでもあります。以下に詳しく解説します。

基礎のみを厳選してインストールする

英文法は、本気ですべてを解説しようとすると膨大になります。なぜなら現実に起きている現象を分類・分析しようと思えばいくらでもできるからです(そしてあなたに必要なのは分類学ではありません!)。ですから深入りしすぎないことが極めて重要です。

つまり、文法書はそれなりに注意して選ぶ必要があります。

潜りすぎ
気管支炎はtheを付けない、はしかにはtheを付ける……
やべ酸素なくなってきた

さあ勉強するぞ! と気負うと「できるだけ詳しい文法書のほうがいい」と考えてしまいがちです。しかしこれは日本語を覚えるのに辞書を買うようなもので、よくある挫折の原因のひとつです。

※おすすめの文法書、おすすめする理由については以下のリンクにまとめています。
英語学習におすすめ本

初期段階の役割は、脳内にある英語知識の地図に杭を打っていくことです。最初からすべてを完璧に準備する必要はありませんし、できません。大まかに何があるのか全体像を把握することです。

深掘りのコツ

英文法をおおまかに復習したら、これからはそれを血肉にしていく課程です。

私が提案する具体的なコツは以下の5点です。

  1. 実際に活きた英語に出会う中で英文法感覚を修正する
  2. アウトプットする(書く)
  3. 違いを理解しようとする
  4. 脳内英会話する
  5. 量をこなす

1.実際に活きた英語に出会う中で英文法感覚を微調整する

まず理想から書きます。

英文法感覚が最も効率的に強化されるのは「実際に活きた英語に触れる中で、勉強した表現に出会ったとき」です。

実際に英語を使ったことのある方は実感としてよく分かることだと思います。

表現したいという気持ちがある、あるいは聞いたときに驚きがある。自分が主体的にコミュニケーションに関わっているときは、脳内の「気持ち」が活発に働いています。

この「気持ち」が「感覚」に強くつながっているのです。

結局のところ、英文法感覚とは、頭の中で考えているイメージ、気持ちを表現しようとしたときに、それが言葉としての英語になるかどうかということなのです。もちろん逆も言えます。

ですからイメージのないところに英語だけ入れても、感覚化にはつながりません。イメージと英語のつながりを強化しなければなりません。英語の「聞き流し」に効果がないのはこのためです。「和訳」は理解しているかどうかの確認手段としては良いですが、これも感覚化には直接つながりません。日本語と英語をつなげるのではありません。みなさんの頭の中でイメージと日本語が既につながっているように、イメージと英語をつなげます。

「はじめに気持ちがあって、言葉と動きがある(© 月影千草)」のです!

なので、英文法の知識を入れた後は、当たり前のようですが、実際の英語に触れてみるのが一番なのです。

目的さえ満たせれば手段は何でも構いません。実際に会話したり読み書きしたりするのが一番ですが、それがなくても、たとえば感情移入できるドラマを観るとかでもいいと思います。

ショック療法
「I go to school! 」
「ちょっ……やっぱこの方法違う気がする」

※共感能力や感情移入の力が強い人は、英語感覚を身に付けるのは早いはずです。たとえば、どんな英文を読むときもその背景にある気持ちをありありと具体的にイメージしながら読むことで、英語感覚というのは磨かれていきます。この方法は人を選びますが、多少なりともエッセンスを入れるようにすると、英語学習全般に役に立つはずです。

ただし、こういった実践のみではどうしても偏ります。短期間で意識してマスターするには網羅性が足りないからです(登場頻度は低いけれども重要な文法というのは存在します)。また、実践に入るにはそれなりの実力がいります。自分のレベルにあったコミュニケーションをしてくれる相手を探すのは難しいことです。

そこで実際には、別の方法も併用します。以下を読んでください。

2.アウトプットする(書く)

インプットだけではなかなか覚えられません。正確には覚えられますが「印象的な出来事」が必要なので効率が悪いです。ほとんどの文章はあなたにとって人ごとです。脳内の感情と結びついていません。だから身に付かないのです。

一方で自分で英語を発信するときは常に自分ごとです。従ってアウトプットの方が遥かに脳にとって効率的です。写経みたいな方法ではなく、自分オリジナルの文章を、自分の気持ちを表現する文章を書くことが大事です。英会話でも良いですが、意識的に文法感覚を身に付けようとするときには断然ライティングをお勧めします。

なぜか。それは出力内容とスピードを自分でコントロールできるからです。

たとえば、仮定法過去の文法感覚を身に付けようといっても、会話ではそうそう出てくるシチュエーションではありません(だからといって仮定法過去が大事でないということは決してありません。このことはいずれ書きます)。ライティングであれば、自分の思いつくままにシチュエーションを考えて作文できます。英会話では相手の言葉を理解したりする余計なプロセスが入るので難易度が高く、効率が悪くなりがちです。ゆっくり確実に、正しい表現を身に付けましょう。

※書くといっても、必ずしも手を動かして物理的に書く必要はないと思います。タイピングで構いません。自分に合う方法を使ってください。私は両方やりましたが、その2つに差を感じたことはありません。

信頼できる添削の先生が必要な方へ。英語SENSEでは初心者から上級者まで「英作文を通して英語感覚を身につけられる講座」を提供しています。
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最後に、自分の作文を声に出して心をこめて読んでください。これで、感覚化に音とスピードが加わります。

心をこめて読むとはどういうことか

思い込み療法
「俺は天才、俺は天才、俺は天才……」

英文法とは心理学です。無味乾燥に見える英文法にも、その背景には人の心があります。

先程紹介した例文でやってみましょう。

If today were the last day of my life, (今日が私の人生最後の日だったとしたら)

If today were と言ったら、その瞬間に、ありえない仮定の世界の気持ち――「たとえばの話ね。ほんとは違うんだけど、仮にね」という気持ちを思い浮かべます。

would I want to do what I am about to do today? (果たして自分は、今日これからまさにやろうとしていることをやりたいと思うだろうか?)

would I want to do と言ったら、would I の瞬間に「自分自身のことに確信がない」気持ちが働きます。つまり自分が want to do かどうか確信がない。そして want to do と来たら、当然その次には目的語としての名詞を期待します。

次に what I am about to do today? と聞いたら、whatの瞬間に、ああ、名詞じゃなくて名詞節が来るのだな、という心構えができ、その後に主語+動詞が来ることが自動的に分かります。

上記の分析プロセスはすべてミリ秒の単位で行われます。難しそうですね。でも、皆さんは日本語でこの難しいことをいともたやすくこなしています。時間は掛かりますが、必ず身に付けることができます。

このように、どんな気持ちを働かせばいいのか、意識しながら読んでいきます。感情を込めながら、何度もつぶやきます。最初はもちろんゆっくりになりますが、段々スピードを上げられるようになります。

文章をどこで区切ればいいか分からないよ、という人へ
あまり細かいことを気にしないでください。ネイティブスピーカーでも(おそらく似たレベルには収束するでしょうが)位置は異なるはずです。感覚とはあなただけのものです。他を参考にする必要はありません。教えられるようなものではありません。

あまりにも途方に暮れてしまう人は、そもそも英文法の勉強が足りない可能性が高いです。このような心理状態を体得するヒントはすべて文法書に書いてあります。

たとえば、SVCの構文ではS=Cと習ったはずです。I am a student. と聞いたときに、I = a student. という意味のイメージを浮かべる。そういう感じです。

この項目で書いたことは抽象的なので、具体的にどうすればいいか分かりにくいかもしれません。心を込めるコツの1つを次に書きます。

3.違いを理解しようとする

文法にはすべて意味があります。たとえば過去系と完了形が違うことには、意味があります。それは、その言葉を発するときに想起される心理的なイメージが異なるのです。

たとえば、will と be going to に違いがある、という話は有名なので聞いたことがあるかもしれませんね。

しかし、どうせ通じるのだからどちらでもいいじゃないか、と思っていませんか?

初学者なら、それでも良いでしょう。しかしこの思い込みこそが、英文法感覚を手に入れる障害なのです。

英文法感覚を本当に身に付けたいのなら「通じればいいや」を捨てましょう。「通じればいいや」は文脈の世界、想像力の世界です。実際のコミュニケーションでこれらが重要なことは言うまでもありません。しかし初心者の段階を越え、本当に英語感覚を身に付けたいと思う人はその考えを一旦捨ててください。

想像に頼るとこうなる
えっと、結局キスしたいってことでいいんだよね?

たとえば、以下の英文は誤りです。

I have not joined the event two years ago.

しかし、なぜ誤りなのか? これを誤りとする根拠は何か? ネイティブはこれを見たときどうして「気持ち悪い」と感じるのか? そういった感覚を身に付けようとしてください。これは決して「細かい英文法」なんかではありません。これがおかしいと思わない場合は、おそらく完了形の「心」が理解できていないと思います。

注意点は、分かったつもりにならないこと。英文法感覚とは「大量の正しい英文に触れた結果として身に付く」ものです。感覚そのものを言葉でインストールしようとしないでください。「~ingは活き活きしている感覚」などと、言葉で入れるだけでは「わかったつもりになる」だけで、むしろ正しい感覚を養うのに邪魔になります。

もやもやしたイメージだけで、できるだけ言語化しないまま留めておくのがおすすめです。その仮説段階のもやもやした英文法感覚を、実際に英語に触れる中で微調整していくのです。

文法書ではなかなか身につかない、日本人にとって特に誤解しやすく理解しにくい英文法のポイントをぎゅっとまとめた全5回のオンライン講座を提供しています。 ”英語が好きになる” 英文法講座のページへ 

注意

コミュニケーションのためには「間違いを恐れずに話すのが大事」と言われますね。私はこれに全面的に賛成します。「違いを意識する」ような深い勉強をしていると、このような心構えを忘れてしまうことがあります。間違えるのは、むしろチャンスなのです。なぜなら、それがきっかけになって、次は間違えないようにできますからね。どんどん間違って、自分の現在位置を確認しましょう。英語学習は長い道のりですから、楽しむことも大事です。間違っていてもいいので「通じた」「話せた」喜びを大切にしましょう。このような積極的な心構えで実践に臨んでいると「実際に英語に出会う中で英文法感覚を修正する」機会も増えていきます。

4.脳内英会話する

ある程度慣れてきたら、書かずにいきなり脳内英会話をした方が効率がいいことがあります。

好きなシチュエーションで構いません。いきなり有名人になってインタビューを受けるとかでもいいし、憧れのあの人とデートするでもいいし、日頃からうっぷんがたまっていることをぶちまけるでもいいし。

なぜ脳内英会話がいいかというと、もうお分かりですね。「気持ち」と「言葉」がつながりやすいからです。

私も架空のアメリカ人の友人トムとよく話をしました。まじめな話です!(笑)

5.量をこなす

感覚が定着するまでのプロセスには長い時間がかかります。

何度も同じことを言いますが、文法とは、覚えるものではありません。忘れてもいいように、体にたたき込むものです。言葉遊びのようですが、この違いは本当に大切です。

従って何度も繰り返して練習する必要があります。知識をおさらいするために学んだ文法書をもう一度開いて、今度は感覚化の練習(書く、それを話す)をしてください。「文法書を1回やった」だけで英語が使えるようにならないのは、このためです。知識として入っているだけだからです。

といっても「文法書を何周もする」と単に言われただけでは、何をしていいものやら良くわからないと思います。

知識として覚えるために、まずは1回通す。概ね知識としては定着したら、次は英文法事項のチェックリストとして使います。「進行形の感覚は概ね身に付いたな」と思ったら、そのページはもうやらない。「現在形」がまだ分からないな、と思ったら解説を読みつつ例文を作り音読する。そんな感じです。そのプロセスの中で、解説を読み直すと新たな発見があったりもするでしょう。知識には濃度があり、知っている/知らないの二択ではありません。深く学んでください。

繰り返しになりますが、文法書は注意して選んでください。分厚い文法書のすべてをこの調子で勉強するのは不可能です。基礎事項のみを網羅してあるものを使ってください。もし自分の持っている文法書のうち、どこまでやるべきか分からなければ……突き放すようですが「自分で判断」してください。その文法項目があなたに必要なレベルかどうかは、あなたにしか判断できません。

余談:学校教育と英文法

ちなみに中高で6年間英語を勉強したのに話せない……とよく言われますね。私は学校教育にはある程度は肯定的(限られたリソースの中でよくやっていると思います)が、不満なのは、定着を甘く見ていることです。英語は実技科目ですから、体育と同じように教えなければいけません。たとえばサッカーでシュートの仕方を教えたら、あとはひたすら実戦でトレーニングする必要がありますよね。それと全く同じです。高度な内容を教えるのを一切やめて、基礎を定着するまで繰り返すようにすれば、はるかに使える英語が身に付くようになると思いますし、英語が好きになって、自分で勉強を続ける人も増えると思います。

英語において難しい問題を答えられるかどうかは重要ではありません。簡単な問題を瞬時に大量にこなせるかどうかが大事なのです(そのためにはまず大学受験が変わらなければなりません)。そういう意味でTOEICのテストは運用能力を測るという意味でとてもよくできていると思います。

まとめ

まとめます。

今回の記事で一番大切なメッセージはこれです:
英文法の知識と感覚は異なる。知識を武器にして、感覚として定着するまで勉強する。

英語感覚を身に付ける方法として以下の5つを提案します。しかし、必ずしもこの通りでなくてもいいと思います。自分に合う方法を使ってください。

  1. 実際に英語に出会う中で英文法感覚を修正する
  2. アウトプットする(書く)
  3. 違いを理解しようとする
  4. 脳内英会話する
  5. 量をこなす